逢いたい~桜に還る想い~


 コンコンッ


「トーコさん……夕飯……」


小さなノックに加えて、ドアが少しだけ開き、郁生くんが覗き込んだ。


「郁生く………つっ!…」


あたしは半分身体を起こし───頭の痛みに耐えられず、そのまま突っ伏した。


「どーしたの!?」


郁生くんが驚き、慌ててあたしの枕元に駆け寄ってきてくれた。


「あたま……痛…い……気持…ち…悪……」


頭を抱えながら、あたしは切れ切れに答える。


「トーコさん、熱あるんじゃない?」


昔、母親がしてくれたみたいに、郁生くんの大きな手があたしの額を覆った。


「結構熱いよ。大丈夫?

今階下(シタ)に行って、冷やす物と体温計───」


言いながら立ち上がった郁生くんを、


「行かないで!」


あたしはとっさに掴んで、引き止めてしまった。