「……そっか」
郁生くんがあたしの頭を撫でてくれた。
心地よくて大好き、この感触。
あったかくて、触れられたところから幸せが広がっていく。
「───あ」
「え?」
「あっという間にこんな時間。
郁生くん、家に戻らないとまずいかな。本屋、閉店の時間になっちゃった」
車のデジタル時計は22時を過ぎている。
「あ、ほんとだ。なんか時間経つの早い」
少し名残惜しくなって、郁生くんの服の裾を掴んでしまう。
「郁生くん……ありがとう」
「ううん、こっちこそ。また家でね───変な感じだけど」
クスッと小さく笑って、郁生くんは自転車に乗り、手を振って走り出した。
だんだん遠くなっていく背中を見送りながら……

