あたしを覗き込む郁生くんの頬を引き寄せて、今度はあたしからチュッとキスをした後、
「……隙あり」
ペロッと舌を出して、ちょっとだけ悪戯っぽく微笑ってみせる。
まさに鳩に豆鉄砲状態でポカンとした郁生くんは───直後、照れ始めた。
「隙ありって……競争じゃないんだから……」
「じゃ、お返し?」
「お返しってさ……てか……なんか……トーコさんからキスされるのって……」
「照れる?」
さっきまでとは形勢逆転と言わんばかりに、覗き込んでくるあたしに、
「……あ、なんか上から目線」
「違うよー。……ふふっ、顔真っ赤」
「気のせいっ、暗いじゃん、ここ」
「あはは、郁生くん」
「なにっ?」
「大好きだよ。すごーく」
「────っっ」
───郁生くん、撃沈。
「………トーコさんの、ばか」
悔し紛れな一言と共に助手席の背もたれにずるっと埋もれる彼を、
あたしは、愛しい気持ちで見つめながら、
さっき頭の中に浮かんだ一つの迷いを、必死に消そうとしていた────………

