「おーい、郁生くーん?」
「…………」
「ねえ、ごめん」
「…………」
「……怒ってる?」
「……い」
「?」
「怒ってない、けど……」
「……けど?」
小さくため息をついた郁生くんは、
「………」
「え?」
まだそっぽを向いたままの郁生くんが、ぽそりと呟いた。
「……追いつかないなー、って」
「え? なに??」
助手席のシートに深く背中を預けた郁生くんの、うつむき加減な横顔を覗き込むと、
「……俺が中学生になったと思ったら、次の年には、トーコさんはもう大学生になってたでしょ。
ようやく高校生になったって、今度は俺が大学生になる前にトーコさんは社会人になるじゃん。
トーコさんに近づきたい。もっと側にいたい。同じものを見て、同じ時間を過ごしたい。
……近くで守れるくらい大人になりたい。
でもさ、どんなに頑張ったって、5歳の差は追いつくことはないから……」

