工業用水路を曲がった先の、工場と小さな公園との間の細道に車を停めて待っていると、
コンコンッ
とガラスをノックする音がして、郁生くんが滑り込むように助手席に乗ってきた。
「本屋行くって出てきた」
ペロッと舌を出して、いたずらっ子のような顔をしながら、
「直接トーコさんの顔見て話したくて……さっきのまんまじゃ嫌で、さ」
「……ありがと」
そ…っと手を重ねると、郁生くんは指を絡めて、指先に優しくキスをくれた。
「さっきはごめん……単なるヤキモチ……です」
「───………」
ちょ……反則。
なんで、そんな可愛い顔する訳?
バツが悪そうな、弱ったような表情を見せる彼に、胸がきゅうっとなる。
さっきまでおかしな空気にちょっと落ち込んでいたのに、あたしって現金だ。

