逢いたい~桜に還る想い~


なんなの……これ……



自分のなのか、自分でないのか、訳の分からないものが、意識を占拠する。


あそこは、父親がまだ学生の頃に発見したお気に入りの場所で、

結婚前から、母親と何度となく訪れていたらしい。


今まで誰にも教えたことがない『秘密の場所』にしていたようだけど、

かわいい孫には見せたくなったみたいだった。


つまり、あたしは当然初めてな訳で。



なのに────“懐かしい”なんて……




 コンコンッ


ドアをノックする音に続いて、


「トーコさん、……大丈夫?」


少し遠慮がちに、郁生くんの声が響いた。


その声を聞いた瞬間、

あたしの意思とは関係のない場所で───なぜか、胸がズキンッと鳴った。


反射的に、……なぜか『今は顔を見たくない』と思ってしまい、あたしはドア越しに答えた。