「……柊子っ?? どうしたのっ???」
その声に、はっと我に返る。
無意識に───あたしの頬に、涙がすーっと弧を描いていた。
……郁生くんの手を、強く握りしめて。
「やだっ、そんなに感動したの??」
母親のそんなツッコミに便乗して、
「あっ…あー……うん、綺麗すぎて、ビックリした……」
何とか苦しまぎれに答えたあたしは、理由の解らない涙を慌てて拭いた。
同時に───パッ!と郁生くんの手を離す。
「ここね、むかしお父さんがね……」
と思い出を語り出す母親へ、「うんうん」と聴き入る振りをしながら、……
あたしは、温もりのまだ残るその手を、
ギュッ……と強く握り、痛みの残る胸の前に押し付けた。

