木々の隙間に、淡い薄紅が現れる。
たどり着いたその先には、
───咲き乱れる桜の老木と、
桜の姿を映して、静かに佇む小さな泉………
城址公園の賑やかな花見から切り離されたその静寂な空間に、
桜は控え目に、けれど強い生命力を放ち、
美しく咲き誇っていた。
そう────“昔”と、変わらずに………
「今年も綺麗だな」
「そうねぇ! ───ね、ね、ここいいでしょ!」
満足げな二人の声も、
「すごいね、秘境みたいな───ねぇ? ……トーコさん……?」
あたしを振り向いた郁生くんの声も、あたしの耳を素通りする。
あたし……ここの桜……
この桜を、探していた────………
そんな想いが膨れ上がりながら、同時に自問する。
探していた?
なんで?
なんのために?
───だって、……

