コップを取ろうとした指先がカタカタと震える。
水がまともにコップに入らない。
それでもなんとか口をゆすぎ、そのままコップを洗面台の中にカランッと落っことすと、
あたしは洗面台脇の壁にズルズル身体を預けた。
「……は…ぁ……」
大きく息をつきながら、ふと───郁生くんの部屋の扉が目に入って、
………それだけで、じわっと目頭が熱くなった。
苦しいよ……
もう、全て消してしまいたいよ……
記憶も想いも全部全部……
そんで、普通に恋してさ……
───だけど。
裏腹に、それを失いたくないと、
まだまだ彼を求める自分がいて。
隣にいたいの……
あなたに、触れたい……
手を繋ぐのは、あなたがいい。
頭を撫でられるのも、抱きしめられるのも、あなたが……
ぽろっ
一滴、涙がこぼれた瞬間───カチャッ
見つめていた扉が開いて。
「────……」
あたしは、反射的に───郁生くんの腕に、
飛び込んでいた………

