「根っこがあちこち出てるから、気をつけて」
そう言いながら、そのままあたしの手を引いて歩き始める。
「なんだろね。こっちも桜の綺麗なところがあるのかな?」
「あの───……」
「なに?」
「ううん……」
『大丈夫、自分で歩けるよ』
『もー、子供じゃないんだからさー』
いつもならそんなツッコミするのに、
───それを飲み込んだのは、
……繋いだ手に感じた、不思議な……
なんて言ったらいいんだろう。
懐かしさ?
───でも、頭をかすめたのは
『トコちゃーん!』
とにこにこ笑っていた幼い頃の郁ちゃんではなくて、
───そういう“懐かしさ”ではなくて……。
あたしの手を引きながら、前を歩く郁生くん。
そう……そして、きっとこの先に───……
「郁生ーっ、柊子ーっ……着いたよー!!」

