郁生くんにべっかんこ!して、
───あたしは、風にふわりと揺れる桜の花に視線を止めた。
「あのさ───……」
「柊子ー! 郁生ー! 今度はこっちこっちー!!」
母親が手を振りながら、父親に続いて植え込みの中に入って行くのが見える。
「やだー、あんな道なき道を……」
少し呆れて、仕方なしに両親の後を追う。
「いいんじゃん? 探険ごっこっぽくて」
「ごっこにしては、随分平均年齢が高い探検隊だなあ……」
「はは、確かに」
両親は揃って来たことがあるらしく、植え込みや丈の高い草を掻き分けて、
木々の隙間をどんどん進んでく。
「待ってよー……わっ!」
木の根っこに足を取られてつまずいたあたしを、
「おっと! ───トーコさん、大丈夫?」
郁生くんが振り向き様、支えてくれた。

