「!! ……トーコさん?」


座り込んだままのあたしは、郁生くんのTシャツの裾を掴んでしまった。


「………あ、あたし……」


思わず……あたし……


「あたし……あの、大丈夫!」


強ばった顔に、無理矢理笑みを貼り付けると、


「話聞いてくれて……心配してくれてありがとう。少し落ち着いたから、寝られそう」


「じゃ、おやすみ」と慌てて立ち上がると、───郁生くんの返事も待たずに、2階へ上がった。



部屋の電気をつけっ放しのまま、ベッドに飛び乗ると、タオルケットを頭からかぶり。



───あぁ、なんであたしは……


あんなに怖くて震えていたくせに、


『側にいるから』


他意のないただの気遣いの一言に、………こんなに胸がドキドキするなんて。


郁生くんに、“触れたい”と思ってしまうなんて。



「恋を優先した自分勝手な“澪”と同じじゃない……」



────『おまえのせいだ』

────『死ねば良かったのに』



その言葉が、またあたしの耳にこだましてきた………