あの日……二人で海に行ったあの日。
あたしが、自分の想いをはっきりと自覚した日。
それを悟られたくなくて、郁生くんから逃げるように、必死に海岸を歩いていた。
ねえ……?
今、背中を向けた郁生くんが、あの時のあたしと同じような気持ちだって、
そう思っちゃ、だめ……?
「───……ねえ」
あの時、郁生くんは─── 一体どんな気持ちで、
この言葉を口にしたの……?
「………“キスしたい”…て言ったら、
───郁生くん……怒る……?」
「………っっ」
その言葉に────
ピタリ、足を止めた郁生くんが……振り返らずに、小さな声で答えた。
「………怒る……」
郁生くん───……
「……ごめん───怒られても、いい」
愛しさが止まらず………あたしは、振り向かない郁生くんの腕に、ギュッとしがみついた。

