「………郁……」
名前を呼ぼうとして、
───ギュッ…と強まる腕に、頭が真っ白になる。
だって……どうして……あたし……
なんで───郁生くんが、
……あたしを、
抱きしめるの………?
───『みお………』───
その瞬間………
あたしの耳元に、あの時の郁生くんの声が蘇った。
……低く、深い音色。
愛しい人を呼ぶ、甘い囁き………。
その切なげな響きが、
あたしを次の行動へと、突き動かした。
「───……郁生くん………離して……」
自分の物とは思えない───真っ黒な声が出た。
その声に、郁生くんの腕の力が、ふ…と緩み……
あたしは、静かに郁生くんの胸を押し離した。

