家の鍵を開けて、「ただいま」とリビングへ行くと、
母親が一人、羊羹を食べつつ、お茶を飲んでいた。
「おかえりー、遅かったんじゃない?」
「あー……本屋に寄り道してて……」
「夕飯は?」
「バイト前にちょっと食べてきた。
───なんかヘンにお腹いっぱいになっちゃったから、いいや」
「そ?」
サスペンスに夢中なのか、またテレビに見入り、
羊羹をパクッとつまみ始めた。
「お父さんは?」
「向こうの部屋でパソコンやってる」
「………郁生くん……は?」
「郁ー? さぁ?
……夕飯の後、2階に行ったような……」
「───そか……お風呂空いてるんだ。入っちゃってもいい?」
「どーぞー。私、これ見てから入るからー」
手をヒラヒラさせて、またテレビに集中。
あたしは荷物を持つと、小さなため息をついて、
静かに2階へと上がっていった。

