ピ…ピ…ピ…ピ…ピ…

「…………ふ…………ちゃ……………」

私はまだフワフワした奥深くの世界にいた。


消えるような幽かな声が遠くからする。

「………………ちゃん……」


…………?


私は意識を徐々にとりもどしていった。

この時本当に深海から陸に戻るように声がだんだん大きくなっていき、手を握るぬくもりも少しずつはっきりとしてきたことを覚えている。


「………ふうちゃん…………」

「ま……ま………っ……」

目をゆっくり開けると、真っ白な天井とオペ室にあるような大きなあかりがあった。

「ふうちゃん?ふうちゃん?」

ままは私の肩を軽くたたきながら私の名前を呼んだ。

「風香ちゃん!分かるかな?風香ちゃん!」

救命医は私の意識をはっきりさせようとしたのか大きな声で私を呼んでいた。

私は動いたか分からないくらい小さくうなずいた。

よかった…


もどってこれた…

呼吸のリズムと同じように酸素マスクが曇るのをみてなぜか安心した。

生き……て…る………

この時初めて「死」というものの恐ろしさを知った気がした。


まだちょっと朦朧(もうろう)とした中、救命室の扉があきシリコン製のスリッパと床かこすれるような足音がどんどんちかずいてきた。

「検査結果出ました。」

私のそばでバイタルなどをみて全身管理をしていたドクターや看護師がいっきに結果資料を持った医師のそばに行った。

あるドクターはレントゲンを見て。

あるドクターは採血の結果を持ち確認したり。

見える範囲で表情をうたがっていた私はだんだん不安になった。

だってドクターも看護師も私と同じように表情がだんだん険しくなっていっていたから。

すると結果を持ってきたドクターがこっちにきた。

「あの…お母様…ちょっと…」

言いにくそうに問いかけ、レントゲン写真の前までままをつれていった。

指差しで何かを説明されていた。

ままの表情がどんどん険しくなる。

もう嫌なほどわかった。

ヤバいんだって。

小2のうちにだって。

それぐらいのことは…

その日は遅くからの緊急入院になった。

初めての患者としての入院。

通常ベッドに変えられ小児外科の重傷室に移動した。

重傷室はICUと同じ感じの部屋。

重傷患者やオペ終わりすぐ、救急などの小児患者がここにはいる。

何度も入退院を繰り返した今だからわかるけど、最初はとにかく恐ろしい部屋としか思わなかったww

その日は寝たか寝てないかわからいぐらい朦朧(もうろう)としたまま朝を迎えた。

そして私の様体が安定して、ままに状況の説明があったそう。

この日から一人ではなく「病気」という名の必要としても無いパートナーとの人生に切り替わった。

パートナー。そして私のライバルとして…


はじめまして。


よろしく。



そして…


ライバルとして。


あなたを絶対に倒す。


わたしのペースで…


わたしの道で…


歩くために…

笑って生き抜くために…