そう言うと、円ちゃんは慧さんの拘束を解き、十メートル以上下の地面へと身を投げた。私達は止めようとしたのだが…間に合わなかった。
そしてそのまま、円ちゃんは…この世界から去って行った。
もはや涙すらも出なかった。何しろ、私にとっては初めての体験だったからだ。心の中に渦巻く思いを整理する事なんて、できやしなかった。
自殺すると決めていたのか、円ちゃんは一通の手紙を残していた。そこには、自分が持病を抱えている事、それが悪化した事によってもうすぐ死ぬという事、そして、私達へのお礼の言葉がつづられていた。
詳しい内容は覚えていない。この出来事ごと、頭から消してしまいたいとさえ思っていたほどなのだから。