始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~

楓との久しぶりの再会を楽しんであっという間に時間が過ぎてしまった。
気心の知れたメンバーで飲むお酒も食べる料理もすごく美味しくて、この時間が終わってしまうことに少し寂しさを感じるくらい。
店を出る時におばちゃんに挨拶をして、4人で横並びになり駅へと歩いた。
改札を通り健吾と楓は下りホーム、隼人と咲季は上りホームだからここで別れることになる。
すると山中くんが声をかけてきた。

「じゃあ俺達は向こうなんで。今井さんは帰り大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫大丈夫」

遅い時間とはいえ、飲んで帰るのはいつものこと。
笑いながら答えると同時に澤田くんが言葉を挟んできた。

「大丈夫だよ、僕が送るから」

当たり前のようにそう言った彼の言葉につい焦ってしまう。

「大丈夫だってば!いつも飲んで帰る時はもっと遅かったりするんだから」

そう反論しても「はいはい」と彼は苦笑して受け流す。
そして私の背中に手を添えて誘導するかのように押しながら歩き出す。
楓と山中くんに軽やかな挨拶を残して。

「じゃあ、またね」

そう告げた彼の顔を見上げれば、にこやかな笑顔を浮かべている。
そして彼のペースで上りホームへの階段へと連れて行かれながらも私は振り返り、楓と山中くんに「またね!」となんとか言葉を残した。
階段を降り始めると、背中に添えられた彼の手は腰へと移動してそっと引き寄せられた。
優しい力なのに、彼の身体に密着してしまう。