始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~

「そうですか。じゃ~おばちゃん、先に始めちゃう」

「そう、じゃあ飲み物は?」

おばちゃんに聞かれて、みんなビールとそれぞれ食べたい物を伝えた。
すぐに運んでもらったビールで乾杯し、あれこれと楓に聞いて山中くんを冷やかして楽しんだ。
楓の嬉しそうな顔を見ると、私も楽しい。
おばちゃんに運んでもらった肉じゃがや揚げだし豆腐、卵焼きなどを食べながら笑い声は絶えなかった。
そこへ入り口のドアが開き、おばちゃんの「あら!いらっしゃい。待ってたわよ」と弾む声が聞こえた。
「こんばんは」と言葉を返すお客の声に反応して視線を向けると、澤田くんが立っている。

「隼人!」

山中くんが呼ぶと、彼は視線をこっちに向けて歩いてきた。

「遅くなってごめんね」

楓と山中くんに視線を送り、ビジネスバッグを床に置いた。

「俺達も始めたばかりだよ。何飲む?」

「ん~、ビールで」

テーブルを見てみんながビールを飲んでいることを確認してそう言った。
山中くんが「おばちゃんビールお願い」と注文している間に彼は私の隣に座り、「遅くなってすいません」とささやくような声で私に微笑を見せた。

「・・っうん」

彼が来たことの喜びと恥ずかしさが相まって、私の返事はぎこちなくなってしまった。