始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~

まだ彼の唇が名残惜しいけどここは『ベランダ』、人の目もあるかもしれない。。いい大人が朝からいつまでもイチャイチャしているわけにもいかず、彼の身体から離れて「コーヒー飲もうか」と声をかけリビングへと戻った。
外とは違い部屋の中はエアコンで心地良く温まっている。
そしてキッチンでマグカップを2つ並べてからとりあえず彼に聞いてみる。

「ねえ、先にシャワー浴びる?」

ベランダから戻った彼はキッチンにいる私の側まで来ると、私の隣に並んだ。

「う~ん、じゃあ一緒に浴びます?」

涼しい顔でそんな質問してくるので、思わず身を引いてしまう。

「・・・っ浴びないよ!」

一瞬動揺した私の反応を見て彼は楽しんでいる様子が見れる。こうやって時々人をからかってくる所が何とも憎たらしい。
軽く睨みをきかせると、口元に笑みを浮かべて「それは残念」と言いながらコーヒーメーカーからサーバーを手に取り、私が用意していた2つのマグカップにコーヒーを注いで1つを手渡してきた。

「ありがとう・・」

何だかんだ言ってもそういう気遣いができる彼。根本は優しいのよね・・。
照れ隠しに思わず口ごもる私に笑みを見せて、自分もコーヒーを口にした。

「美味しいコーヒーですね」

そう言ってもらえて嬉しくなる。

「本当?お気に入りのカフェの豆なんだ」

「へぇ~そうなんですか。じゃあ今度そのお店に一緒に行きたいな」

「一緒に?」

「そう、デートで」

甘い笑顔でそんな風に言われたらドキッとするじゃない。本当にずるい奴。
自分の好きなものを気に入ってもらえると無条件に嬉しいけど、デートでという言葉にそれ以上のトキメキみたいなものを感じてしまう。
胸の鼓動を悟られない様に唇を一瞬キュッと結んでから平静を装った。