始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~

「楓への気持ちに気付いてから、澤田くんのことが気になっていたの。あまりにも紳士的に楓のこと見守っていたから。どうしてそんな風にできるのかなって。最後まで自分の気持ち隠す澤田くんの気持ち考えたら何かね・・。あの日は本当に慰める気持ちで飲みに誘ったの。好きな人から身を引く気持ちを自分のことと重ねて考えちゃって。今日は側にいてあげたいって思っただけだったの、本当に。だから澤田くんと寝てしまったことに自分が驚いているの」

あの日のことを思い出すと、今でも整理がつかない。それを言葉にするのは難しい。でも澤田くんがちゃんと聞いていてくれるから、自分の中に渦巻いていたことを伝えることができた。

「こんなつもりじゃなかったって凄く後悔したの。どうしようって、考えれば考える程分からなくなって。だって澤田くんが変わり過ぎなんだもん。まだ勢いでしちゃっただけで無かったことに・・って方が受け入れやすかったのに。逆にどんどん近づいてくるなんて、想定外なのよ・・・」

「嫌でしたか?」

低く柔らかい声で聞かれると、それには首を横に振って答えた。

「嫌じゃないよ、でも戸惑うでしょ。何で?どうして?って思うことにずっと振り回されっぱなしだよ。だって澤田くんだよ?どれだけ女子が騒いでいるか、自分でも分かっているでしょ?だから一回寝た位で何かが変わるなんて思っていなかったし」

何だか自分で話していても、ゴチャゴチャと分からなくなる。

「いろんなことに、どうして?って考えると答えが出ないの」

ハッキリしない私の問いかけにも、澤田くんはゆっくりと頷いてくれる。そしてそっと手を伸ばして私の手をゆるく握ってきた。

「僕はどんどんあなたに惹かれています」

「嘘だ・・」

「本当ですよ、僕はあなたに惹かれている」

ささやくような声に言い聞かされる。