畑山先生は私を見送った後、ご機嫌な鼻歌を歌いながら玄関の扉を閉めた。草履を脱ぎ捨てリビングに入る。
すると、そこにはソファーに寝そべりながら知恵の輪で遊んでいるいつぞやかの少年の姿があった。
「…なぁ。あいつ、どこに行ったんだ?」
「あいつって?」
ニヤニヤしながら惚ける先生に苛立ち、少年は知恵の輪を放り投げると、ソファーからズイッと身を乗り出す。
「凛だよ!!いい加減殴るぞテメェ」
「あ~…凛ね~、ふ~ん」
先生が悠長にタバコを銜えるのを見ると、少年はすかさず彼の目の前へ飛び出し、タバコを奪い取って拳を勢い良く振り上げた。
しかしそれは先生に当たることなく軽々と躱され、少年の身体はよろけて前へと傾く。
「今のは惜しいわ。けど先生に手ェ上げるんはいただけんなぁ…それに大事なタバコも一本ダメにしよって。こりゃお仕置が必要やね」
「ヤ、メ……」
先生は少年の右手を捻り上げ、背中に回してはがい締めにすると、床に強く押し付けた。苦しそうにジタバタともがく少年を見下ろし、先生はニッコリと微笑む。
「ごめんなさい、やろ?俺はシツケにうるさい先生やけね。タバコを粗末にする人間にはなったらいけんよ。わかった?」
「こんの、エセ教師!!ヘビスモ!!サド!!ロリコ………はっ…」
少年はしまった、と咄嗟に口を塞ごうとしたが、両手を拘束されている為それは叶わない。おそるおそる首を動かして先生の方を見ると、案の定、彼は黒い笑みを浮かべていた。
「肩が外れるのって相当痛いんやで。知っとる?」
