「そっか、同じクラスだったのね。私、学校に来ても教室に行かないから分からなかったの。ごめんなさいね」
「…………」
どうして教室に来ないんだろう。きっとよっぽどの理由があるんだろうから、聞かない方がいいか。
「フフッ。今、どうしていつも教室に来ないんだろうって思ったでしょ」
西嶋さんは膝を折り曲げて私の顔を覗き込むと、悪戯っぽく微笑んだ。
「思ったけど、言いたくないことなら無理に言わなくていいよ」
「あら、他の子なら食い付いて来るのに。貴女みたいな子は珍しいわね」
「誰にだって知られたく無いことの一つや二つあると思うし。…だから深くは聞かないことにしてる」
自分自身そうだから、とは言わないけど。
「……好きだな。そう言う性格。ねぇ、私と友達になってくれない?」
「………え?」
友達。
友達。
友達。
聞き慣れないその言葉。私の頭の中の辞書にはない言葉が、やけに新鮮で
「宜しくね、凜ちゃん。私のことは樹里って呼んで?」
樹里に差し出されたその手を、オズオズと握り返した。
・つづく・
