未紀にフラれた。でも、俺にとって、今の琴音ちゃんは放っておけない。

未紀ならわかってくれると思ってた。

「ごめん、琴実ちゃん…いこっか?」

そう言って、おんぶの体制をとった。

こう思うのは悪いけど、今琴音ちゃんが歩けないのは俺にとって、好都合だ。生徒には涙を見せたくない。

今はただ、未紀を失った悲しみを全部流さしてほしい。

俺は、必死に声を殺して泣いていた。

「…せんせ…い…大丈…夫??」

俺の呼吸が荒くなっていたのを背中に乗っていた琴実ちゃんは気づいていたんだろう。

熱の生徒に心配されるなんて、今の俺は、めっちゃ情けないんだろうな…

「うん」

それ以上の言葉を言うと泣き出してしまいそうだった。

琴実ちゃんを助手席にのせて、シートベルトをし、イスを倒した。

ただ、黙って運転していた。住所のかかれた紙を見ながらただ、ひたすら運転に集中した。

家につくと、琴実ちゃんを部屋まで運び、ベッドに寝かせた。

そして、冷蔵庫のものを使ってお粥を作り、洗面所にあったタオルを濡らして琴実ちゃんのおでこにのせた。

「琴実ちゃん??きついと思うけど、少しでもいいから食べて?」

だるそうな琴実ちゃんを起こしてお粥を食べさせた。

「…先生…薬…棚の…中…」

ベッドのとなりの棚を開けると薬が入っていた。

それを飲ませて、琴実ちゃんを寝かせた。

熱にうなされてる琴実ちゃんのおでこのタオルをときどき変えていると、未紀のことを思いだしたりした。

やっぱり好きだった。

今じゃ遅いけど、好きだった。

そう思うと涙が止まらなかった。