恋の糸がほどける前に


「今月は学生カップルの方限定のメニューをお出ししておりましたので、いかがでしょうか?お料理もデザートも、とても可愛らしいんですよ」

そう言って店員さんが指差したメニューについていた写真は、本当に可愛らしかったし、なによりすごくおいしそうだった。


ふわふわのオムライス……!

すごく惹かれる……っ!!

しかもしかも、デザートのチョコケーキがすごく可愛い。

すごくおいしそう。

食べたい。


……ううう、でも。

でも!!


「……美味しそうですけど、じつは私たちカップルじゃな」

「じゃあそれでお願いします」


カップルじゃないんです、と言おうとしたのに。

水原はあっさり私の言葉を遮って、店員さんに負けない笑顔でカップル限定メニューを注文した。


かしこまりました、と頭を下げ、厨房に向かう店員さんの後ろ姿を見送って、私は驚いたまま正面の水原を見る。