恋の糸がほどける前に


「うまそ」

「水原、ここ来るの初めてなの?」


ご飯系もデザートも種類が豊富にそろったこのカフェは、私にとっては中学のころからお世話になっているお店。

値段もリーズナブルだしアットホームで入りやすいカフェだから、なんとなく、この辺の学生は一度は来たことあるんじゃないか、なんて勝手に思っていたんだけど。


「初めてだよ。だって男同士じゃ入りづらいじゃん、さすがに」

「……あ、そっか」


水原の言葉に、改めて周りを見渡してみると、確かに学生は多いけれどそのほとんどが女子高生か、恋人同士と思われる男女。

たしかに外装もどちらかと言えば可愛い感じだし、男子だけだと入りづらいかもしれない。

そこまで大人数で入るような場所でもないし、ここに来るには男子は彼女を作らなくちゃならないのかぁ。

大変だなー。


なんて考えているうちに、店員さんが注文を取りにテーブルまでやって来た。


「お決まりですか?」

可愛いお姉さんのにっこりスマイルに、慌てて水原が持っていたメニューを覗き見る。


「あ、えーっと」


「オススメとかってあります?」


私があわあわしている間に水原がそう訊くと、店員さんは素敵スマイルのまま、メニューのいちばん最初のページをめくった。