恋の糸がほどける前に



────いつもは通り過ぎるだけの、学校近くの小さな駅。

改札を出てホームに出ると、同じ高校の生徒でいっぱいだった。

いつも徒歩だから、こういう電車やバスの混雑とは無縁。

だけど、もしも自分が電車通だったら毎日こんな人混みにもまれなくちゃならなのか、と想像しただけで、当たり前みたいにこの人の多さに耐えられる周りの皆を尊敬のまなざしで見ちゃうよ。

……うん、学校が家から近くてよかった。本気で。


「……すげー人」

ぽつり、隣から聞こえた呟きに、私は思わず頷いていた。


「俺ら家近くてよかったな」

「それ、私も思ってたよー」


考えることは皆一緒なんだなぁ、なんてしみじみ思っていたら、


「やっぱり。俺ら昔から考えること同じだよな」


と楽しそうな笑顔を向けられて、ドキン、と心が鳴る。


そ、その笑顔は反則だよ……っ!


……電車がきて、ふたりで慣れない満員電車にもみくちゃにされたのに、それにすら嫌な顔一つせず、「すげー」を連発していた水原。

電車を降りて、駅の近くにあるカフェに入ると、珍しそうな顔をしてメニューを見ていた。