恋の糸がほどける前に



気付けば、身体が水原の腕の中にすっぽり収まっていて。

感じる体温に、鼓動に、胸を襲う痛みが増す。


なんで?

なんで、こんなことするの?


水原には雫先輩が、いるのに。


「はなして……っ」


「三浦。頼むから、話、聞いて」


ギュッ、と腕に力を込められて、気付く。


本当に微かに、だけど。

……水原、震えてる。


「みず、はら……?」


どうして、震えてるの……?


「ずっと嘘ついてて、ごめん。……彼女ができたなんて、嘘なんだ」


「……え?」


耳元で聞こえる水原の声は真剣で、冗談なんかじゃないっていうことは私でも分かった。


でも。


『亮馬くん』


親しげに、甘い声でそう呼ぶ雫先輩の声が脳裏をかすめ、ギュッと心臓が苦しくなる。