冗談に聞こえないくらい切羽詰まったような口調に胸が不覚にもドキッと鳴って、すぐには言葉が出て来ない。
だって。
今、なんて言った?
私のこと、好き、って、そう言ったの?
────キュッ、と一度、強く唇を噛む。
「……いくらチョコが欲しいからって、彼女がいる人はそんな冗談、言っちゃだめだよ」
なんとか言葉を押し出した。
……痛い。
なんてヒドイ冗談を言うの?
ドキッとしたのなんて、ほんの一瞬。
だけど、その余韻のせい。
胸が、心が、痛いよ。
「……ごめん。私、先に行く」
丁寧に片づけることをやめ、机の上に残っていたペンケースやら単語帳を手のひらで流し入れるようにしてカバンの中に乱雑に詰めた。
「水原がそんな最低な冗談言う人だったなんて、知らなかったよ」
ガタン、と席を立ち、カバンを乱暴に肩に掛けた。
自分では明確な理由がわからないまま、目頭が熱くなって、鼻の奥がツンと痛んで。
涙の、気配がした。


