教科書とノートをカバンに入れ、電子辞書をカバーにしまいながら、冗談交じりにそう言う。
……分かってるよ。
今年はもう、義理チョコだってあげられないんだ、ってことくらい。
「そうじゃなくてさ」
「本命ってこと?うーん、そうだなー、私のことを好きって言ってくれる人にならあげようかなー?」
なんて、無理に笑って心の痛みを誤魔化した。
自分からこんな話題にしておいて、何、傷付いてるの。
「じゃあ、好きって言ったら俺にもくれんの?」
「あはは、もちろん。でも」
「俺」
『水原は言えないでしょ』、と。
そう言おうとした私の言葉を遮った水原の声があまりに切なげに聞こえて、思わず片づけていた手を止め、顔を上げた。
キュッと眉根をよせた水原の顔が真剣で。
なんだか私の方まで苦しくて、泣きたくなった。
「……もう、無理かも」
「……水原?」
「これ以上抑えんの、無理だ」
自嘲気味に笑ったあと、水原は呆然としたままの私に強い視線を向けてきた。
「もうどうやったって諦められないくらい、俺、……三浦のこと好きかもしんない」


