恋の糸がほどける前に


「いいよ、別に。どうせ最後だし、慌てることないだろ」

「そうだけど!やっぱり、悪いもん」


慌てれば慌てるほど、手元が上手くいかない。

さっきからいったい何回、掴み損ねて消しゴムふっ飛ばしてるんだ、私。


「今更そんな気ぃ遣い合うような仲でもないだろ。なんか寂しくなるからやめろよ」


そんな私を見かねたように、水原がそう言ってくれた。


そう言われて。

トントン、と教科書とノートを机に打ってそろえる手が、無意識のうちに落ち着いた手つきになった。


「……もう2月なんて、はえーよな」


私が片づけるのを眺めながら、水原がそんなことを呟いた。


「……そうだね」

「1年、ホントあっという間だった。もう2年生になるとか、信じらんないし」

「ふふっ、確かにね。でもその前に卒業式だってあるし、……ほら、2月といえば、水原はバレンタインだって楽しみにしておかなきゃ」

雫先輩、料理上手なんだから。


「……三浦は?」

「私?友チョコ、作るよ。芽美と毎年交換してるし、水原にだってあげてるじゃん」