恋の糸がほどける前に


「え。何、機嫌悪い?せっかく補習終わったのに」


不思議そうな表情で私の顔を覗き込んでくる水原。


……あー、もう!

水原は何も悪くないんだから、早くテンションも機嫌も戻さなくちゃ。


「あ、わかった。さては頭使いすぎて腹減りなんだな!……三浦、今日これからなんか用事ある?」

「……へ?……別にないけど、なんで?」


もう部活も終わる時間だし、と思ってそう返すと、水原はにっこり笑った。


「せっかく補習終わったしさ、なんか美味いもんでも食いに行こ」

「え」


ご褒美ご褒美、と楽しそうに言う水原は、ポケットからスマホを取り出して、何やら検索している。


「なんか食いたいもんある?」

「や、ていうか私まだ行くって言ってな」

「今日何もないんだろ?じゃあいいじゃん。補習頑張った記念」


何、そのめでたくもなんともない記念は、なんて思ったけど。

不思議と、先程までのイラつきは綺麗サッパリ消え去っていた。