お前のほうが俺なんかよりずっとしたたかだよ。

葉純の気持ち、知ってたんだろ?

きっと、亮馬の気持ちだって気付いていたはずだ。


それなのに、一体どんな魔法を使ったらそうなるんだよ。


「嘘だよ!……だって、キス、してたじゃない」


表情を歪めて、雫が言った。


キス?

……あー、告白したところ、見られてたのか。

まぁ、あれ音楽室の近くだったしな。


「盗み見なんて趣味悪いな、お前。あんなとこでやってた俺も悪いけど。……それに、あれは俺が一方的に奪っただけで、合意じゃない」


そう言ったら、雫は驚いたように目を瞠った。


「……本当に、付き合ってないの?」

「だから、そうだって」

「嘘……、どうしよう」


あんなに強気な態度だったのに、雫の顔が急に泣きそうな表情に変わった。