「当たり前だろ。好きじゃなきゃあんなに一緒にいねぇよ」
雫と付き合い始めたのは、高1の冬。
付き合ってからの毎日は、自分でも呆れるくらい、雫漬けで。
隣で笑ってくれるだけで、幸せだった。
雫にしてみたら、あんなにあっさり別れたくせに、って思うかもしれないけど、俺にとっては、雫だからこそ、だった。
大事だったからこそ、まっすぐ向き合わなきゃと思ったんだ。
後ろめたい気持ちがあったら雫に対して失礼だと思ったんだ。
「嘘だよ……!だって貴弘くん、私と別れてすぐに葉純ちゃんと付き合い始めたじゃない。あんなにすぐ彼氏彼女になれるなんて、ずっと前から想い合ってたんだとしか思えない……!」
「……は?」
興奮したように言った雫の言葉が理解できず、思わず眉を顰めた。
「何勘違いしてんのか知らないけど、俺の一番最近の彼女って、お前だぞ?」
「……え?」
「葉純とは付き合ってねぇよ。……雫が思っていた通り、俺は葉純のことが好きだったけど、フラれたし。
あいつには他に好きな奴がいるって、お前だって知ってるだろ?」
そのあいつが好きな奴、はお前が掻っ攫って(かっさらって)いったわけだけど、と心の中で付け加えておく。


