「高校入って初っ端のテストで赤点とか、さすが」
ククッと人の悪そうな笑い方をしているのにその綺麗な顔が崩れないのは、詐欺だと思う。
言い返す言葉も見つからなくて、思わずため息が零れた。
……ほんとに、もう。
せっかく補習地獄から解放されて、気分は雲ひとつない快晴って感じだったのに。
テンションだだ下がったよ……。
「もう、ほっといてよ。それに、学校では名前で呼ばないで、って言ってるでしょ。先輩のファンに見つかったらどうすんの」
絶対放課後屋上とか体育館裏とかに呼びだされて、怖い目にあわされるに決まってる。
そんなの絶対イヤ。
考えただけでゾッとする。
「あー、ハイハイ。まったく、お前自意識過剰なんじゃないの?俺が葉純のことを名前で呼んだくらいで誰も勘違いしないって。ただのペットだと思われるって」
「ペット!?」
あんまりな言われように、思わず目を剥(む)いた。
いくら自分が見目いいからって……!
失礼すぎるよね、こいつ……!


