恋の糸がほどける前に


ギリギリではあったものの、なんとか合格点を超えられた私は、ルンルン気分で机の上の筆記用具を鞄にしまい、足取り軽く教室を出た。


「あ」

ガラッ、という教室のドアが閉まる音と共にそんな声が聞こえてきて顔を上げれば、目の前にはよく見知った顔。


「……何?葉純、補習だったの?」


私が出てきた教室を一瞥(いちべつ)してから、笑いをこらえるような顔でそう言ったのは、間違いなく私のイトコ。

……萩野先輩だ。

手には鞄ではなく数冊のファイルや本があるのを見ると、委員会の途中なのだろう。

芽美と同じく、赤点なんて影も見えない成績のこの男。

……からかわれること間違いなしだから、赤点とっちゃったこと、コイツにだけは知られたくなかったのに。

しかも。

こんな赤点を笑うような意気地の悪い性格のくせに、生徒会役員なんてやっている。

こんな人でなしが生徒を引っ張っていく側だなんて、全く、世も末だ。