「俺、彼女ができた」


……葉純が隣にいて欲しいのは、俺じゃない、って。



彼女ができた、と告げた瞬間、葉純の目が大きく見開かれた。

彼女の瞳に映る自分が見えて、思わず泣きそうになる。


……俺がまっすぐ伝えたかったのは、こんなことじゃなかった。


「……今、好きな人いるのかっていう質問。いる、よ。好きな人」



────葉純が、好きだよ。


って、そう言いたかった。



「そう、なんだ」


驚いたような顔のまま、呆然としたまま、葉純が呟くようにそう言った。



……なぁ。

これで、合ってるよな。

俺、間違ってないよな。


心が押しつぶされそうなくらい痛くて、カッコ悪い嘘だけど、バカな頭じゃこんな方法しか思いつかないんだ。

葉純の幸せのために俺ができることって、きっとこれくらいしかない。


……うん。

葉純。


本当は、嫌だけど。

もう、今までと同じではいられないから。



────手を、はなすよ。