「ちょ、苦し……っ」
「いや、……俺の方が苦しいから」
耳元に届いた掠れた声。
その声がなんだか本当に辛そうで、言葉が出なかった。
「ホント、苦しい」
グッ、と。
これ以上近づけるはずのない距離をどうにかして近づこうとするように、更に抱きしめられる力が増す。
どうしようもなく、心にズキンと痛みが走った。
「……早く、俺のこと好きになれよ」
今まで聞いたことがないような貴弘の悲痛な声。
心が、大きく震えた。
息吐くのと同時に感じたのは、涙の気配。
「た、かひろ」
お願いだから、そんなこと言わないで。
貴弘だって、私のとって本当に大事で大好きな人なんだから。
自分のせいで苦しんでいる姿に平気でいられるほど、私は強くなんかない。
私がもっと早く断っていたら、こんなふうにずるずると貴弘を苦しめることなんてなかったのかな。
そう思っても、こんなふうに辛そうな貴弘に追い打ちをかける様なこと、今はできない。
また私には、ノーがいえない。
「……葉純?」


