少し怒ったような口調でそう言うと、貴弘が少し身体を曲げた。
あまりに突然のことに、貴弘の顔が近付いてきても身動きすら取れずにただ呆然としてしまう。
「……似合ってる。すっげ可愛い。
って俺が言っても、お前はどうせ信じないんだろ?」
ふっ、と耳たぶをかすめた吐息とともに直接脳に響いたセリフに、自分ではどうにもできずに心臓が鼓動を早くした。
「~~~っ」
かああっと一気に顔に熱が集まってくる。
もう、頬に触れたらやけどしちゃうんじゃないかな、これ。
「……あれ。そうでもないのか」
明らかに動揺した私に、貴弘は意外そうにそう言った。
「う、うるさいっ!びっくりしただけだもん……っ」
こんなに動揺してることに驚いているのは、私だって同じだ。
どうして、好きでもない人の言葉にこんなに頭がくらくらするの?
理由なんてわからないけど、ふいに水原のことが思い浮かんで、ずん、と罪悪感が胸を襲った。
……違うよ。
このドキドキは、貴弘の甘いセリフにときめいたからじゃない。
恋愛感情なんかじゃない。
うん。
こんなに心臓が鳴ってるのはきっと、いつも憎まれ口ばかり叩かれている分、反動が大きかっただけ!
「葉純」
呼ばれて、反射的に顔を上げた。
「そういう顔されると、……我慢できなくなるからやめろ」
「え……?」


