────突然。
ポン、と頭の上に乗ったてのひら。
振り返るまでもなく、見上げるまでもなく。
よく慣れたそのてのひらの大きさと力加減に、それが誰かなんて考えるより先に分かってしまう。
不安に押しつぶされそうに心が弱った今、いつもと変わらないそのてのひらをなんだかすごく優しく感じてしまって困る。
「……もー。重いからどいて!」
グッ、と水原のことを考えて泣きそうになっていた気持ちを押し込めて、私は貴弘の方に顔を上げた。
するとすぐに、頭に乗っていたてのひらが離れていく。
「ハイハイ。まったく、お前はもうちょっと優しい言い方ができないわけ?」
いつもと変わらない、からかうような軽い雰囲気の貴弘。
「貴弘に優しくしたって仕方ないでしょー」
学校で会った時に感じた、どこか傷付いたような様子はもうないからホッとして、私もいつもと同じように言葉を返せる。


