恋の糸がほどける前に


「あっ、水原!からあげだよ!」

引っ張られながら目の前を過ぎていく出店の中に、『からあげ』と大きく書かれたものを見つけて思わず声を上げた。


「ほら、あそこ!……って水原、聞いてるー!?」


結構頑張って大きな声を出しているつもりなんだけど、水原はまるで何も聞こえていないようにずんずん歩みを進めていく。

聞こえてないのかな、と思って何度かからあげアピールを続けてみたけど、何の反応も得られないまま、からあげの出店を通り過ぎてしまった。


「ちょっと、ねぇ。どうしたの?」


なんだか少しずつ歩くペースも速くなっているような気がする。


「ちょっと歩くの速いよ。ねぇ、水は、きゃっ!!」


「うわっ!?」


……慣れない下駄のせい。

ううん、それより、私の言葉を無視して早足に歩いていた水原のせい。


「……ごめん。大丈夫?」


「う、うん」