恋の糸がほどける前に


まだ少しだけ残っていた私のやきそば。


水原はそれを横からかっさらってあっという間に食べてしまうと、ぽいっと近くにあったゴミ箱に空になったタッパーを投げ入れた。


「ん。ごちそうさん」

パンッ、と手を合わせた水原に、私はムッと頬をふくらませた。


「ごちそうさん、じゃないよ!私のやきそばー!」

「まだまだ食うもん残ってるからいいだろ!次はからあげだな!」

「っ!」


グイッと引かれた手。

再び触れたてのひらは、やっぱり温かかった。


離したくない、離してほしくない。


そう願ってしまうのはきっと私のわがままだけど、できることならずっとこの温もりをひとり占めしていたいと、心から思った。