恋の糸がほどける前に


人並み、って何!?


高校生だし、初恋もまだ、とかそんなんじゃないよね。

ファーストキスの平均年齢だって、16歳とか17歳とか、そのへんだってきいた気もする。

……ていうことは、それなりに恋愛してきた、ってこと!?

私が、知らないだけで。


「……葉純?」

ふいに黙り込んだ私を不思議に思ったのだろう、水原が俯きがちだった視線を上げて私を見た。

名前を呼ばれて、ハッとする。


「っ、ごめんごめん!えと、じゃあ今は好きな人とかいる、の?」


「え、いま!?」


「え?う、うん」


こちらが驚いてしまうほどびっくりされて、私は戸惑いながらも頷く。


「……そういう葉純は?」

だけど水原は私の質問には答えずに、私にそのまま問い返してきた。

まさか私のことを訊かれると思わなくて、フリーズしてしまう。



「おーい、葉純ー?」

「えっ、あ、や、やだなぁ。水原だって知ってるでしょ?私が恋愛に無縁なの。今まで彼氏いたこともないよ!」


あははと取り繕うように笑って見せたけど、水原は誤魔化されてはくれなかった。


「いや、そこじゃなくて。……今好きなヤツいるのか、っていうところを訊き返したつもりだったんだけど」