「どした?」
思わず吐き出してしまったため息に、水原が不思議そうにそう訊いてきた。
「……水原って」
「ん?」
「好きな人とかいたことないの?」
物思いにふけっていたテンションのまま思わずそう口にしてしまう。
なにを訊かれたのか理解できていないようにポカンと私を見る水原の様子に、しまったと思ったけれど、一度出てしまった言葉は取り消せない。
「な、な、なんだよ、いきなり!?」
「え、ゴメン。なんとなく」
「なんとなくかよ」
思いっきり動揺した様子の水原に私はなんだか安心してしまった。
お前には関係ないだろ、とか言われたらどうしようかと思ったよ。
こんなに一緒にいるのに、お互いの恋愛話なんて今までほとんどしたことがない。
思春期の男女のくせに不自然なくらい、恋バナなんて本当にしたことがなかった。


