恋の糸がほどける前に


「おー、美味そ」とやきそばを口に運び始めた水原に、私もそれに倣うようにやきそばを食べ始めることにする。


もぐもぐとやきそばを食べながらも、考えるのはやっぱり水原のこと。


……なんていうか。


水原は、優しいよね。

私に、とかじゃなくて、基本、みんなに優しい。


だから、どんなに優しくしてくれても、笑顔を見せてくれても、それは特別なんかじゃない。

いつだって明るくて楽しそうな水原は誰にも壁を作らないから、たとえどんなに周りから仲がよく見えていたって、それが水原にとって近い存在であるかどうかなんてわからない。


それは、痛いくらい分かっている。


本当に認めた相手にしか心を開かないような、柴犬タイプだったらいっそ分かりやすかったと思うのに。

人懐こい水原は確実に、柴犬よりもゴールデンレトリーバータイプだ。


ねぇ。

水原にとっては、一体どこからが特別なの?


ふたりで出かけたら?

名前で呼んだら?

当たり前みたいに手を繋げたら?

言葉がなくても分かりあえたら?


「……はぁ」

全然、わかんないよ。