「どうしたの?」


「……や。なんか、さ」


「うん」


珍しく言い淀(よど)んでいる水原に、先を促すように相槌をうつ。

だけど、結局水原は小さく息を吐きだしただけだった。


「……てかさ、俺らだけお化けに出会ってないって、それはそれで怖いよな」


「本当だよねー。ふたりで騒ぎすぎて気付かなかったのかな」


「そう思っとくかー」


うん、そういうことにしよ。


苦笑して、私は頷いた。



「……そういや今週、祭りか」


ふと空を見上げて、水原が思い出したように言う。


つられるように、私も視線を黒い空に向けた。