恋の糸がほどける前に


私のほうが下の段にいるし、もともと水原の方が背が高いしで、水原の視点がなんだかものすごく上から降ってくるような感じがする。

いつもと違う距離に、これも新鮮だなぁ、なんて考えていたんだけど。


「……ないのとあるのじゃ大違いだけど、1回と2回はそこまで変わらないよな?」


やけにマジメな声で言う水原。


無いのと有るの?

1回と2回?

……何言ってるの?


水原の言葉の意味がさっぱりわからず、私は首をかしげてしまう。


「だから!」


軽やかな足音が、壁に反響してやけに大きく聞こえた。


あ、一段近づいたんだ、って思うと同時に、まだ熱を持ったままの手首が再び強く掴まれて。


するっと触れた柔らかいその熱が、掌にふれた。



「……え?」


これ、なに?


手、つないでる……?