恋の糸がほどける前に



「ご、ごめん。ありがと」


そうだよね。

水原が支えてくれなかったら、私この階段、落ちてた……。

想像したら、今更ながら恐怖に足がすくんだ。


怖くてドキドキして、水原にドキドキして、もし落ちてたら、と想像してドキドキして。


心臓が忙しすぎてついていけないなぁと思いつつ、私はふー、と大きく息を吐き出してから、振り返って水原を見た。


「大丈夫、落ち着いた!」


暗いから水原に見えているのかは分からないけど、ニコッと精一杯笑って見せた。


「ん。気をつけて歩けよ。俺の方がびっくりすんだから」


「はい!」


掴まれていない方の手でびしっと敬礼すると、水原はフッと息を吐いた。


「本当にわかってるのか不安」


「わかってるってー!」


あはは、と笑って言うと、水原がするりと手を離した。