恋の糸がほどける前に


「おーい、三浦?」

「……ごめん。行こっか」


水原の二度目の呼びかけに、ため息交じりに答えた。

サングラスを外しながら、音楽室を出る。


「なんで外すんだよ。似合ってたのに」


「暗くてよく見えなかったでしょ?似合ってるなんてそんなのわからないじゃん」


「ぼんやり見えたって。それに三浦が似合うのは分かってたから!授業中眼鏡かけてるの、似合うよなって実は思ってた!」


自信満々の水原に、ため息をついて見せた。


……心の中では、そんなふうに言ってもらえることがすごくうれしかったけど、素直にそれを表すことなんてできないもん。


たしかに授業中は黒板が少し遠いから、眼鏡をかけることがある。


だけど、それについて触れられたことはなかったから、こんなときに褒められるなんて思っていなくて、なんだか不意打ちを食らった気分だ。


似合うと思ってたとか……っ!

もう。

……もうっ!!