恋の糸がほどける前に


何のためらいもなく、さっきまで自分がかけていたサングラスを私にかけさせた。

抵抗する暇もない。


「なにすんのっ!」

キッと睨んでみるけど、水原には暗いうえにサングラス越しの私の視線は、きっと見えていない。

それが残念だと思うと同時に、赤くなっているであろう顔を見られなくてよかったとも思った。


あー、もう。

なんだかすごく恥ずかしい。

顔の近くに触れられるのって、心臓に悪いよ。


水原にとってはいつもの戯れにすぎないに決まってるのに。


さっきまでは、怖さのせいでドキドキしていたけど、今は違う。

こんなにドキドキしてるの、水原のせいだよ……!


「あ、やっぱ似合うな」


案の定、私の睨みなんて気付いていない様子で、水原は私を見て感心したようにそう声を上げた。


……暗いせいで、よく見えない。

それがさっきはありがたいと思ったのに。


「……」